株式会社鳥取銀行審査部 次長 兼 与信企画室長 福田高明様
審査部 与信企画室 副調査役 山田 諭様
鳥取銀行は、鳥取県に本店を置いている唯一の地方銀行として、鳥取県を中心に営業展開しています。10年以上前から個人向けローンのWeb申込を始めていた同行は、Webでの手続利便性向上を目指し、セイコーソリューションズの「融資クラウドプラットフォーム」を導入。2021年5月19日より個人向けローンで、申込から契約までのWeb完結を実現しました。そして事業性融資の電子契約に関しても、2024年2月より、全店展開を開始しました。事業性融資での電子契約導入の経緯と導入効果について、鳥取銀行 審査部 次長 兼 与信企画室長 福田高明様、同部 与信企画室 副調査役 山田諭様にお話しを伺いました。
── 鳥取銀行について教えてください。
「とりぎん」の愛称で親しまれる鳥取銀行のシンボルマーク・青い鳥は、1989年10月のCI導入の際、行章として制定されました。現在、県内に53店舗、県外にも島根県、岡山県、広島県、大阪府、東京都に12店舗を有しています。
皆様もご存じのように、地方金融機関を取り巻く経営環境は、目まぐるしい変化を続けています。当行が本店を置く鳥取県では人口減少や少子高齢化が進んでおり、後継者不在率も高く、事業所数は年々減少しています。
このような環境下、当行は2024年4月に新たに鳥取銀行のパーパス“地域社会の未来を「創る」「守る」「支える」”を制定するとともに、中期経営計画「for the FUTURE ~未来に向けて~」をスタートさせました。 本計画では「地域社会を力強くリードするコンサルティングバンク」を目指す姿とし、「新たな地域価値の創造」、「コンサルティング深化」、「経営基盤の強化」、「人的資本経営の実践」という4つの重点テーマに取り組み、当行がコンサルティング能力を発揮して地域の先頭に立ち、明るい未来を切り拓いていくことを目指していきます。
地域が存続していくためには、未来を担う世代が安心して暮らせるまちを創ることや、雇用の場を守ることが必要です。私たちは地域金融機関として、これまでの金融の枠組みを越えたサービスを提供するとともに、更なる地域の価値向上に取り組むことで、持続可能な地域社会の未来を「創り、守り、支える存在」になりたいと思っています。
そして、以前から取り組みを続けている銀行業務におけるDX化と生産性の向上をさらに推し進めて、リアルとデジタルを融合させ、便利で安心して利用できる商品・サービスを提供していきます。
その一環として、無担保ローン契約手続をWebで完結する「個人向けWEB完結ローン」実現のために導入したセイコーソリューションズの「融資クラウドプラットフォーム」を活用して、事業性融資においても契約の電子化を進めていきたいと考えました。
── 「融資クラウドプラットフォーム」を導入された経緯を教えてください。
導入の背景として、先にお話ししたような環境下、銀行の法人業務は、本来業務の融資だけでなく、M&Aや事業承継など多角化しています。そのために行員には幅広い知識が求められ、お客様との交渉も深いものになってきます。一方で銀行でも働き方改革を推進しており、時間をいかに有効に使うかが求められています。数年前にお客さまと実際にお話しする時間である有効面談時間の調査を行内で行いました。当行の1日の業務時間は8時間ですが、面談の時間は2時間程度で、残りの6時間はお客さまを訪問するための移動時間や書類の準備、行内の稟議書の作成などに取られていました。調査の結果を踏まえ、行内の議論は効果的な“事務の合理化・効率化”を図り、限られた人員・時間で生産性向上を目指す方向に向かっていきました。
議論において効果範囲を考慮した上で、“稟議決裁後の融資事務フローが長く負担が大きい”という課題の元、“電子契約システムの導入で作業工程を大幅に短縮”する目的で電子契約を検討しました。
── 有効面談時間をきちんと確保することが導入の一因なのですね。
そうですね。加えてコロナ禍により非対面の契約ニーズも意識しました。一時期は来店を嫌がるお客さまもいましたので、営業店はかなり苦労したと思います。現在、コロナ禍は収まっていますが、今後において同様のリスクに備えておくことは大切です。
一方で事務のために必要な時間があることも事実です。例えば当座貸越の場合、融資枠内で自由に出し入れするためには借入請求のための伝票が必要です。この伝票1枚を受け取るためだけに客先に伺うことも多々あり、お客さまと時間をすり合わせることも必要になります。当行では営業店の再整備を進めており、一営業店の担当エリアが拡大している傾向にあり、その時間調整に大変苦労している実態もありました。そうした事務を削減する必要性も電子契約を考えるきっかけになっています。
とはいっても、当行は地域金融機関ですので事業性融資において完全非対面化は現状想定していません。事業性融資の場合、お客さまと面談をするプロセスは外すことができません。例えば最初に電子契約サービスをご利用していただく際には面談をして、それ以後の継続的な取引に関しては非対面で行う、ハイブリッド型での展開を考えました。お客さまにも事務の負担を減らしてもらい、将来に向けた打ち合わせに時間を使っていこうと考えたのです。
── 「融資クラウドプラットフォーム」を導入された決め手を教えてください。
導入までの流れを時系列で紹介すると、2021年3月に投資決定、電子契約導入の判断がなされ、約半年間でベンダーの検討、そして決定を行いました。導入開発のキックオフが2022年10月。そこから約1年間の準備期間を経て、試行でのリリースが2023年10月、全店展開が2024年2月です。
ベンダーの検討に際しては、複数のベンダーからご提案をいただき、比較検討した結果、システムの優位性、サポート対応で優れている点が多かったセイコーソリューションズの「融資クラウドプラットフォーム」を導入しました。
── ベンダーを比較検討したとき、どのような点が優れているとご評価いただいたのでしょうか。
当行にはすでに導入し稼働しているシステムが複数あります。例えば契約書を作る前段階として稟議のシステムを導入しています。そこで決裁された内容を契約書に落し込むわけですが、紙面の場合は稟議システムから出力した内容をもとに契約書のベースを作成し、お客さまに署名や一部項目の記載などをしてもらいます。
そこで今回の電子契約の導入に際しても、既存の仕組みを踏襲し、稟議システムの内容を電子契約システムに連携し、新しく入力する項目が極力ないかたちでの契約書作成を行いたいと考えました。
このシステム連携を実現できることがベンダー選択の重要な要件で、それにフレキシブルに対応していただける点を評価して、セイコーソリューションズの「融資クラウドプラットフォーム」を導入しました。
先に導入期間が約1年とお伝えしましたが、システム連携のところの要件定義に時間をかけたためです。システム連携がもっと少なければ、ここまでの時間は必要なかったと思います。
── 「融資クラウドプラットフォーム」の導入効果を教えてください。
── 「融資クラウドプラットフォーム」の導入にあたり工夫した点を教えてください。
「融資クラウドプラットフォーム」の導入に際して、今までの業務フローを見直し、業務をシステムに合わせる方向で再確認し、業務の効率化につなげました。実際、以前の業務フローにシステムを合わせようとするとかなりの工数になります。その一つひとつには意味がありますが、それをきちんと見直し、再認識、再構成できた点はよかったと考えています。
担当部の私たちが、見直し中で、再認識できたことは、合理化・効率化される内容は、形式的な事務部分であり、再構築されたフローは、ご融資した資金の使い道、今後の事業の方向性、経営者の思い・意志など、本質的なコミュニケーションに不可欠な内容になったということです。現在、行内向けに電子契約の推進をすすめていますが、行内に再構築したフローの意味や意義もしっかりと伝えています。
── 「融資クラウドプラットフォーム」の今後の活用予定を教えてください。
今回導入した電子契約機能の部分では、銀行取引約定書、契約条件の変更、当座貸越の融資枠の設定など、対象とする契約範囲を段階的に拡大していきたいと思います。
また、現在電子化できているのは業務フローの最後の契約の部分だけです。業務フローの川上部分、例えば、保証協会付融資の利用申込等、電子化できるところは進めていきたいと考えています。
「融資クラウドプラットフォーム」には、今お話ししたことに対応できる機能があることは承知しています。別なシステムを使うことになると、行員にとって負荷がかかることになりますので、うまく活用していきたいと思います。
── セイコーソリューションズ並びに「融資クラウドプラットフォーム」への期待、リクエストなどありましたらお聞かせください。
開発過程でかなりご無理を言った部分もあると思います。そうした際にも人情味あふれる対応、柔軟な対応をしてくださったことにはずいぶんと助けられました。
今お話しした今後取り組みたいことは、セイコーソリューションズからご提案いただいていることでもあり、「融資クラウドプラットフォーム」で対応できる内容も含まれています。今後、それらに取り組んでいきますので、引き続きサポートをよろしくお願いします。
株式会社鳥取銀行様、 本日はお忙しい中、貴重なお話しをありがとうございました。