三井住友トラスト・パナソニックファイナンス株式会社
事業企画部 リテールファイナンス企画課 副調査役 仲野和基様
事務企画部 デジタル・事務企画課 副調査役 板橋華奈様
三井住友トラスト・パナソニックファイナンス株式会社では、住宅資金つなぎローン契約の電子化を企図して、セイコーソリューションズの「融資クラウドプラットフォーム」を導入しました。導入の経緯や工夫された点、導入効果について、三井住友トラスト・パナソニックファイナンス株式会社 事業企画部 リテールファイナンス企画課 副調査役 仲野和基様、事務企画部 デジタル・事務企画課 副調査役 板橋華奈様にお話を伺いました。
── 三井住友トラスト・パナソニックファイナンス株式会社について教えてください。
当社は社名が示す通り、三井住友信託銀行の子会社でありながらパナソニックの資本が入っており、金融とメーカーそれぞれの強みを生かした総合ファイナンス業を営んでいます。創業は1951年に遡り、創業者は松下幸之助氏です。当時はラジオが月給3ヵ月分と高価な時代で、ラジオ普及のための分割払い制度の提供が当社の祖業です。
そこから合併を重ね、現在は総合ファイナンス業として4つの事業を行っています。法人向けには各種ファイナンス・ソリューションを直接ご提供する「ホールセール事業」と小口リースにより販売金融をご提供する「ベンダーリース事業」があります。個人向けにはパナソニックの街の電気屋さんの販売をご支援する「パナソニックショップ事業」と、住宅関係を始めとする各種消費性ローンをご提供する「リテールファイナンス事業」です。
今回、セイコーソリューションズより「融資クラウドプラットフォーム」を導入したのは、「リテールファイナンス事業」にて取り扱う「住宅資金つなぎローン(以下、つなぎローン)」で、システムには「つなぎパートナー(Tsunagi Partner)」と名付けました。
── 「融資クラウドプラットフォーム」導入前は、どのように契約業務を行っていたのですか。
まず、つなぎローンとは住宅ローンが融資されるまでの間に必要となる土地の取得費用や建築工事の手付金などを一時的に立て替えるためのローンです。注文住宅を購入する際、住宅ローン融資が実行されるのは住宅がお客様に引き渡される日ですので、つなぎローンは住宅ローン実行前に必要となる資金需要にお応えするものです。
当社のつなぎローンは、当社社員がお客様と直に接するのではなく住宅販売会社様に代行契約をお願いしております。つなぎローンが必要なお客様がいらっしゃった場合には、住宅販売会社の営業担当者様が当社に代わりお客様に契約書記入等をご案内し、書類を当社に郵送いただきます。
不慣れな契約書の記入においては修正を要することも多く、その場合には営業担当者様が再度お客様宅へ訪問し、訂正印を取得いただくこととなります。営業担当者様にとってお客様宅への訪問には営業コストがかかりますし、紙の契約書を持ち歩くことは紛失のリスクが伴います。またアポイントは土日等の休日が多いため、営業担当者様、お客様双方が貴重な時間を浪費してしまうこととなります。
話は変わりますが、市中金融機関では住宅ローンの電子契約は標準装備化され、電子化はかなり進んでいます。ご利用されるお客様の電子契約への抵抗感はこの数年で相当薄まったと思われます。
一方、住宅販売業界では住宅ローン契約以外の電子化は遅れていると認識しています。個人のお客様が人生に何度とない高額なお買い物をされるということで、対面で紙契約を行うという文化が根強く残っていると思われます。
つなぎローンにおいても例外ではなく、電子化している金融機関はごく少数であり、当社でも複写式の契約書に記入・押印をいただいていました。
しかしコロナ禍を経て、住宅販売業界でも契約の非対面化や電子化はトレンドとなり、不動産の販売に係る注文書や請負契約書の電子化も急速に進んでいます。同時に効率化もキーワードとなっています。
このような状況下で住宅販売会社様よりご要請を受け、当社でもつなぎローンの電子化を検討するに至りました。主として住宅を購入される世代である30~40代の方は、いわゆるデジタルネイティブと呼ばれるようなパソコンやスマホが当たり前の世代です。住宅ローンは電子契約であるのに、つなぎローンは紙契約という点に違和感を持つ、書類の記入や郵送、訂正印等の対応が非常に面倒と思っておられる方が非常に多いという実態が見えてきました。これらの状況を受け、つなぎローン契約の電子化の検討を具体的に進めることとなりました。当社ではリフォームローンの電子契約は2017年頃から行っており、現在では約9割が電子契約で行われています。その経験を活かし、つなぎローン契約電子化の垂直立ち上げを目指すプロジェクトが始まりました。
── 「融資クラウドプラットフォーム」導入の決め手について教えてください。
セイコーソリューションズはグループ会社で取引があったことをきっかけに紹介を受けました。開発を依頼するベンター選定では、セイコーソリューションズを含む数社から提案をいただき、内容を比較検討しました。「融資クラウドプラットフォーム」の導入の決め手は以下となります。
1. 導入のスピード
当社としては住宅販売会社様からのご要望を受け、早期のシステムリリースを目指していたため、導入までのスピードが決め手となりました。2021年末にプロジェクトを開始、翌年春頃には開発ベンダーをセイコーソリューションズに決定し要件定義を開始しました。その後約4ヶ月のカスタマイズ期間を経て、プロジェクト立ち上げから概ね1年後である2022年11月にはシステムをリリースできました。
2. コスト
他社のスクラッチ開発の提案と比較すると、パッケージという事もあり、導入スピードだけでなく、コストも大幅に抑えることが出来ました。
── 導入において、工夫されたことを教えてください。
まず、シーン別に申込みのフローを2つご用意しました。住宅販売会社様が基本的な契約内容を下書きとしてセットしお客様に確認をお願いするフローと、お客様が最初からすべての項目を入力するフローです。
住宅販売会社様が下書きをセットするフローは、いままでの紙の契約書のフローを踏襲しつつも電子化のメリットを活かすものです。つなぎローンは一般知名度が高くないことから、お客様は資金が必要となる時期やその額が分からないことがあるため、基本情報は住宅販売会社様で下書きとして入力できるようにしました。その後、お客様にWeb上で住宅販売会社様が入力した内容の確認や修正をしていただきます。しかし、お客様の入力内容によっては住宅販売会社様が意図していない内容となってしまうことも想定されます。そのため、お客様に確認・入力していただいた後で再度、住宅販売会社様が内容の確認を行い、必要に応じてお客様と打ち合わせをした上で、当社に送り出せるようにしました。
一方で住宅販売会社の営業担当者様の事務コストの視点から、契約書への入力はすべてお客様にご対応いただくようなフローも想定されますので、その場合はお客様にすべて入力していただくことで、そのまま当社へ申込みができるようにもなっています。このように申込みの導線としてのフローを2つご用意しました。さらにフローの電子化に併せて、住宅販売会社様のDXに資する仕様もご用意しました。
── 住宅販売会社様のDXに資するとは、どういった内容なのですか。
住宅販売会社様がつなぎローンの契約内容をシステム内でチェックすることを目的として、営業担当、課長、部長など組織構成に合わせ最大8階層の承認フローを自由に設定できる機能を実装しました。当社のつなぎローンには、お客様との契約を住宅販売会社様に保証いただくという条件があります。そのため、多くの住宅販売会社様において当社つなぎローンを利用することに対し、社内での稟議や申請が必要となります。社内稟議書を紙で回付している場合は、つなぎパートナー内のワークフローへ切り替えていただくことで電子化でき、住宅販売会社様のDXにも資するシステムとしました。つなぎパートナーのこれら機能を住宅販売会社様の営業ツールとしてご利用いただくことで、住宅販売会社様の営業リソースの創出やDX促進にも貢献できると考えています。
── 「融資クラウドプラットフォーム」の導入効果について教えてください。
1. つなぎローンの契約の80%が電子化、一部では電子契約率100%を達成
2022年11月のリリースから9カ月で、つなぎパートナーをお使いいただいている住宅販売会社様において80%が電子契約となりました。また、一部の住宅販売会社様では100%電子契約にてお取引いただいております。これにより当社内の業務効率化やBPRにも寄与しております。今後、更なる機能拡充やサービスの向上により、電子契約率をもう一段高めていきたいと考えています。
2. つなぎローンを申込むお客様の利便性が向上
時間を気にせずに内容の確認や申込みができた、契約書記入のためだけに休日の時間を割かなくて済んだ、急に修正が必要となった場合にWeb上で対応できたなど、利便性の向上を実感していただいております。
3. 住宅販売会社様の効率化に貢献
住宅販売会社様の中には電子契約システムの操作に不安を感じる方もいらしたと聞いております。しかし、実際に使っていただくと直感的に操作できるので、説明書を読まなくても使えたとのご感想をいただきました。また、つなぎパートナーのワークフロー機能を使うことで、上司が出張していたが稟議を進めることができたといったお声もありました。紙の契約書がなくなることで契約書原本の管理や郵送も不要となるため、管理コストの削減にもつながります。
── 「融資クラウドプラットフォーム」の今後の活用予定について教えてください。
つなぎパートナ―の開発は第1フェーズと第2フェーズに分けて進めており、現在は第1フェーズが開発完了し第2フェーズの要件定義を行っているところです。
第1フェーズは、申込みから契約完了までに対応したものです。お客様向けには完全電子化となっていますが、住宅販売会社様と当社間の手続きには一部紙が残っています。第2フェーズでは資金実行以降ご返済手続きまでの電子化と、各種機能強化を行う予定であり、住宅販売会社様との手続きも含め、完全な電子化を目指していきます。
── セイコーソリューションズ並びに「融資クラウドプラットフォーム」への期待、リクエストなどありましたらお聞かせください。
セイコーソリューションズには、各種カスタマイズ開発やサポートを丁寧にご対応いただき満足しています。パッケージのサービスですが、細やかなカスタマイズに対応していただき、当社のこだわりや工夫をシステムに反映できました。第2フェーズの開発は、住宅販売会社様と当社の一層の効率化、お客様の利便性の向上、印刷紙の削減による環境配慮につながるものと考えております。今後も質の高いソリューションのご提案に期待しています。
◎三井住友トラスト・パナソニックファイナンス株式会社
URL https://www.smtpfc.jp
※ 取材日時 2023年7月