SDNから「全銀TCP/IP・広域IP網」ヘの移行に際し、システムに触らずに「通信回線だけ」の変更ができる「ROS³」は、導入以来、20年以上トラブルなく安定的に運用できています。
株式会社しんきん情報サービス
決済関連事業部 決済ビジネス推進部 担当部長 青木尊則様
業務支援担当 細野様
株式会社しんきん情報サービスは、1982年に東京・沖縄および関東・甲信越の全信用金庫の情報関連会社として設立されました。信用金庫向けサーピスに加え、同社では代理収納システムをスーパーマーケットやドラッグストア、駅コンビニエンスストアなどに提供しています。
現在、約1万店舗に提供されている同システムの構築にあたっては、セイコーソリューションズの「統合EDIサーバー構築パッケージROS³」を導入しています。
導入の経緯と導入効果について、株式会社しんきん情報サービス、決済関連事業部 決済ビジネス推進部 担当部長 青木尊則様、業務支援担当の細野様にお話を伺いました。
— セイコーソリューションズの「統合EDIサーバー構築パッケージROS³(ロス・キュービック)」を導入された背景について教えてください。
しんきん情報サービスは1982年に東京・沖縄および関東・甲信越の全信用金庫の情報関連会社として設立されました。主な業務としては信用金庫に向けて、口座引落や口座振替、ATMのコールセンターなど、さまざまなシステムやサービスを開発、提供しています。
一方で決済関連事業部では、1999年より公共料金の代理収納サービスを開始しています。現在では、スーパーマーケット、ドラッグストア、駅コンビニエンスストアなど、約1万店舗でご活用いただいています。
1999年当時、コンビニエンスストアにATMが設置されるようになり、チケットの発券や公共料金の支払いができるマルチメディア端末が注目を集めていました。当社で信用金庫のお客様にヒアリングしたところ、スーパーマーケットやドラッグストア、コンビニエンスストアなどで料金収納ができるシステムに対するニーズがあることがわかりました。
そこで代理収納システムを提供すべくシステム開発に着手しました。まったく新しいシステムの開発ですので、大手コンビニのシステムを参考にしたり、一般にコンビニ収納といわれるものにどのような種類があるのかを調べたりしました。すると電気・ガス・水道などの5大公共料金と通販会社など、100社以上の収納があることがわかりました。これらの会社と伝送していくにあたっては、全銀ベーシック手順やX.25といろいろなプロトコルがあり、しかも1次局側と2次局側、さらには各種VANサービスなど多種多彩な方法がありました。また、全銀ベーシック手順には対応していても、X.25には対応していないものがほとんどで、それらを網羅するためにはどのハード、ソフトを導入すれば実現できるのかは暗中模索の状況でした。
— どのようにして、「ROS³」の導入にいたったのですか。
全銀ベーシック手順が使えるソフトはたくさんありましたが、携帯電話会社にリアルタイムでつなぐX.25に対応したシステムはなかなか見つかりませんでした。最初は全銀ベーシック手順をキーワードに探していたのですが、X.25をキーワードにして探したところ、セイコーソリューションズのUSTというプロコトルコンバーターが出てきました。そこでX.25ができて、全銀ベーシック手順が使える、という風に調べていったところ「ROS³ ver3」をみつけました。USTの導入も必要になりますが、1台ですべてできるのはセイコーソリューションズだけです。他社のシステムはパソコンに追加でボードを入れる必要などがありました。
そこでこちらからセイコーソリューションズに連絡を取り、代理収納システム構築のために「ROS³ ver3」とUSTを導入しました。導入当初はEDIというシステムはありませんでしたので、外部プログラムからAPIで制御していました。
それ以来、20年以上に渡り、トラブルもなく安定的に運用しています。
また、5年に1度、サーバを更改していますが、2009年のサーバー更改時のアップデートで「ROS³/EDI」に完全移行しました。
— 全銀TCP/IP・広域IP網への移行についてお聞かせください。
ISDNが終息するという話は10年ほど前からあり、現在では2024 年1月に終息といわれています。当社がISDNからの移行について検討を始めたのは2018年度のサーバー更改のときです。また、今回の次の更改は2022年度になるため、タイミングとしては遅すぎますので、2018年度の更改が機会としてはベストといえます。
サーバーの更改に向けて、セイコーソリューションズからはISDNの動向、業界動向などを踏まえたご提案を頂きました。サーバー更改時の「ROS³」のバージョンアップの際、最新バージョンならオプションを追加するだけで、2017年に発表された「全銀TCP/IP・広域IP網」に対応可能であるとの提案がありました。その後、業界団体(日本代理収納サービス協会)よりISDNの移行先が「全銀TCP/IP・広域IP網」に決り、サーバー証明書、クライアント証明書を使うこととなりました。
— 例えば新たなシステムの検討は行われたのでしょうか。
まったくありませんでした。そのままバージョンアップして問題なく使えてきましたので、将来的にも問題なく使えると判断しています。仮にぜんぜん違うものを持ってきたとしたら、基幹システムとの接続にも影響ができます。
ですから、他のシステムという選択肢、検討はまったくありませんでした。
— すると2018年度のサーバー更改にあたっては、「ROS³」をバージョンアップし、「全銀TCP/IP・広域IP網」に対応するオプションをあわせて導入したのですね。
その通りです。また、今までも保守契約は結んでいましたが、そのときの保守契約からサブスクリプション的になって、よりサポートを厚くするとのことでしたので、安心してお任せしました。
— サーバー更改、「ROS³」のバージョンアップはスムーズに進みましたか。
これまで長年トラブルなしで来ているとはいえ、新しいやり方になるわけですから、実際にテスト環境を作って、通信テストを行いました。もともとサーバーは東京にありますが、今回はBCPの強化も考えて九州に第2センターを構築しました。サーバーは東京とほぼ同じ環境を構築し、メインサーバーとの間で繰り返しテストができる環境を作りあげました。セイコーソリューションには、「ROS³」のバージョンアップの際にデータ移行作業もすべて依頼しています。実際のデータをもとにしたテスト環境を作ってもらいましたので、サーバー証明書やクライアント証明書の登録、更新といったテストも実施することができました。実際のデータをもとにした「全銀TCP/IP・広域IP網」対応のための設定方法をきちんと教えてもらいました。
試行錯誤もありましたが、十分に「全銀TCP/IP・広域IP網」対応の準備ができましたので、2021年から移行の準備が整ったお客様から、ISDNから「全銀TCP/IP・広域IP網」への移行を進めています。
— 実際にISDNから「全銀TCP/IP・広域IP網」ヘの移行を進めているわけですが、「ROS³」の導入効果について教えてください。
お客様の対応状況を見ながら順次切り換えています。全クライアントの1割程度で移行がすんでおり、2023年中には全クライアントの移行を済ませる予定です。
今回のISDNから「全銀TCP/IP・広域IP網」ヘの変更は、あくまでも「通信回線だけ」の変更です。その点が「ROS³」の設計がよくできている点だと思います。つまり、現在ISDNで動作しているシステム環境にまったく手を入れずに、通信環境だけ新しい通信環境に移行できる構造になっています。これは回線の定義とファイルの定義を別に持っていることによるものだと思います。
基幹システムに手を加えることなく、回線の切り替えができる点は「ROS³」を導入する大きなメリットだと思います。
ですので、現状のISDN伝送の環境で本番運用を行いながら、並行して「全銀TCP/IP・広域IP網」への移行を同時進行で進めていくことができます。新旧の両方の回線環境を併存できますので。仮に「全銀TCP/IP・広域IP網」への切り換えが失敗した場合でも、切り替え前のISDN伝送での本番運用ができます。
つまり、移行のリスクが激減しますので、お客様も当社も安心して移行作業を行うことができるのです。
仮に「全銀TCP/IP・広域IP網」対応のシステムを全面的に新しく構築していたら、移行と同時にISDNでの伝送ができなくなると想定されますので、本番環境への影響も出てくるかもしれません。その点、「通信回線だけ」の変更ができる「ROS³」は優れていると思います。
— システムに手を加えず、回線の切り換えができるという「ROS³」の特性をうまく活かされているのですね。
具体的な手順をお話しすると、ISDN用の既存の「相手先ID」と「伝送ファイルID」はそのままにして、「全銀TCP/IP・広域IP網」用の新しい「相手先ID」と「伝送ファイルID」のペアを作成します。その際、センター確認コードは新しい番号を採番する必要がありますが、OPTDフォルダ配下の「物理ファイル名」は既存のものと同じものを指定します。
この状態でお客様企業との接続テストが実施できます。
本番移行は、切り換え直前日に「ROS³/EDI」の「定期スケジュール」を旧「伝送ファイルID」から、新「伝送ファイルID」に変更するだけの作業です。
新旧2つの「伝送ファイルID」を併存させている状態であれば、いつでも「伝送ファイルID」を切り換えることができますので、万が一の失敗、トラブル発生というときにも、本番伝送を止めることなく移行作業を進められます。
— 「全銀TCP/IP・広域IP網」ヘの移行はこれから本格的に進められると思います。セイコーソリューションズ、ならびに「ROS³」への期待、リクエストなどありましたらお聞かせください。
移行を進めているお客様とのやりとりの中で、いくつか課題も出てきています。致命的なものはありませんが、今後のバージョンアップなどで対応をお願いしたいと思います。また、今後移行を進める際にサポートが必要になることがあるかもしれませんので、その際はよろしくお願いします。
また、セイコーソリューションズでもクラウド型のサービスをリリースされたり、今後リリースしていく予定もあるとお聞きしています。2018年度のサーバー更改の際に九州に置いた第2センターは、データセンターに格納していますが、サーバー自体はクラウドを活用して、東京のオンプレミス環境と同じ環境を作りあげています。
BCPの観点からも、今後、東京のセンターもクラウド化が考えられます。ただ、どの程度クラウド化するのかについては、今後、慎重に検討していきたいと思います。そうしたクラウドの活用についても情報提供とご提案に期待しています。
しんきん情報サービス様、本日はお忙しい中、貴重なお話をありがとうございました。
○ 株式会社しんきん情報サービス
URL https://www.shinkin-sis.co.jp/
※ 取材日時 2022年6月